「週刊誌のこれからを考えるシンポジウム」を聞いてきた

 今日、上智大学で「週刊誌の編集長たちが集まって、週刊誌のこれからを考えるシンポジウム」が開かれたので聞いてきました。会場がそれほど広い場所ではなかったこともあり、立ち見も出る大盛況でした。聞き取れなかったところもあるので、各出演者の発言の中で、特に残ったものをメモしておきたいと思います。多少意訳してメモしているのでご了承を。

田原総一朗氏(ジャーナリスト):週刊誌はテレビや新聞で書けないこと言えないことを書くべきだ。最近の週刊誌の編集長は度胸がない。テレビ朝日だってケンカはしている。弾圧にビビっていないか?


佐野眞一氏(ノンフィクション作家):雑誌の凋落は編集者の劣化と読者の賢明さによるものではないか。雑誌の休刊が相次いでいるが、雑誌は会社や経営者のものでも編集者のものでもない。社会のものである。


田島泰彦氏(上智大学教授):個人情報保護法による取材源への規制と、名誉毀損訴訟の賠償額の高額化が大きいのではないか。


 以上が第1部「闘論!週刊誌がこのままなくなってしまっていいのか」での主な発言。以下は第2部「編集長は発言する!「週刊誌ジャーナリズムは死なない」」での主な発言。

週刊現代』加藤編集長:細木数子の裁判など勝っているものもある。


週刊朝日』山口編集長:以前は怒鳴り込んできたりしてくる人が居て、逆に「反論記事を書きませんか?」などとコミュニケーションができていたが、最近はいきなり訴訟。目的は名誉の回復ではなく黙らせること。弁護士が増えたことで仕事のない弁護士も増え、「名誉毀損訴訟をビジネスにしている弁護士」も増えてきている。売り上げに関しては情報デフレが厳しい。


週刊アサヒ芸能佐藤元編集長:下半身のスキャンダルは公共性・公益性があるかどうか・・・。こうなると守りに入っても仕方がないので世間を騒がせたい。


『フラッシュ』青木編集長:取材の仕方が変わった。コンビニの規制(都の条例など)。


週刊文春』木俣元編集長:今回の新潮に似たようなことが以前あった。現在はチームを組んで仕事をやるのが難しくなった。「表現の自由」は業界内部の用語と思われるかもしれないが、結局は「知る権利」に関わってくる。新潮に関しては、虚報だけを攻撃しても仕方がない。問題は赤報隊の真犯人は誰なのかと言うことを書くべきだ。


週刊ポスト』海老原元編集長:週刊誌は売ってナンボ。スクープは読者が決める。売れなきゃスクープではない。たくさん売って、その上での雑誌ジャーナリズムだ。読者と乖離しては売れない。もう八百長では売れないし、ヌードがあるからと言って売れるわけではない。次に売れるものが何なのかを考えるべき。


週刊プレイボーイ』樋口編集長:フェアプレーは時期尚早。


週刊金曜日』北村編集長:クライアントフリー。変な訴訟は逆に訴え返せばよい。そもそも、新聞が売れない理由はもともと新聞を読んでいないから。読んでいても1時間も2時間も読む人は居ない。せいぜい5〜10分くらい。つまりは惰性で購読していた。固定費。それが変動費と感じるようになったから売れなくなった。週刊誌は暇つぶし。でも今の暇つぶしはネットやケータイ。今のビジネスモデルではどちらもだめ。市民記者なんかと同じにされては困る。もっと編集者は楽しむべき。今度はトーハンや日販の悪口を書きたい。


『週刊大衆』大野編集長:うちはジャーナリズムではない気がするが。正義がない。うちの存在理由は文化の多様性。ネットの情報は憎悪が中心。雑誌は批評して茶化してというもの。それが憎悪中心になるのでは分かりやすいかもしれないが生きづらいし、生き残れない。


『週刊SPA!』渡部編集長:雑誌ジャーナリズムの周辺部にいると考えている。広告に頼るのは無理。そもそも広告の費用対効果の化けの皮がはげてきている。売り上げを増やさなければ。雑誌が「お金を習慣的に意識的に払う読者を持っている」というのは媒体としての強み。それを他の形で。雑誌の魅力は多様性。自社サイトで記事をばら売りしても売れるわけがない。ネットやケータイ内で多様性のあるコンビニのようなものがあればもう少し利益が得られるのではないか。


 各編集長が一度話しただけで、各出演者との絡みが少なかったのは残念ですが、とても面白いシンポジウムでした。冒頭で報道の自由や出版不況と絡めた話が出てきたときは、どうなんだろうと思いましたが、各編集長のそれぞれの思いはそういった「おおそれたもの」とは違っていたこともあり少しほっとした印象があります。僕自身は週刊誌のようなスキャンダル的なジャーナリズムが世間のニーズとずれてきているのではと考えているので、一部の「しっかり調べたら売れる」ということや、それがジャーナリズムの存亡に関わるというようなとらえ方に対しては否定的です。ポストの海老原氏のように「売れてナンボ」「売れるための工夫」というのは、マーケティング的にも常識な話ですし、SPA!の渡部さんのように「自社サイトでは売れるわけがない」という意識をもっと持ってくれれば良いのになぁと思うばかりです。