オバマはなぜ勝利したのか?〜アメリカ大統領選挙の決定要因〜

 オバマ氏が20日アメリカ大統領に就任しました。ちまたでは「オバマ演説集」などがヒットし、オバマブームの様相です。

 では、そもそもどうしてオバマが勝利したのか。それはブッシュが・・・ということもあるのでしょうが、先月私の大学時代の師匠の関連しているシンポジウムでそういった発表が日米研究機構という早稲田大学の研究機関でされていたので紹介したいと思います。

「分断、そして再統合?―2008 年アメリカ大統領選挙の決定要因」


 前回2004 年大統領選挙の結果は、東西両海岸諸州および中西部の一部の州で民主党ケリーが辛うじて勝利する一方、面積として大部分を占める大陸中央部の州では共和党ブッシュが優位を占めるなど、国土がまるで二つに分断されたかのような状況を現出させ、人々に大きな衝撃を与えた。アメリカは文化的、宗教的、政治イデオロギー的にかくも異質な人々からなる国なのか、と。そして2008年、こうした「分断されたアメリカ国民」の再統合を掲げ、大統領選挙を戦い、勝利したのが民主党黒人候補のオバマであった。果たして「分断されたアメリカ」をめぐるこれら二つの大統領選挙は何を意味するのか。またオバマの勝利は現代アメリカ社会についてわれわれに何を教えてくれるのか。そもそも「分断」はアメリカ社会の紛れもない真実なのだろうか。それとも政治的に作り出された虚像に過ぎないのだろうか。
 本講演では、こうした問題に対してより広く政治システム論、政治文化論、市民社会論の視点からアプローチする一方、2004年および2008年大統領選挙の州レベルの集計データの統計分析を通じて、それぞれの大統領選挙における決定要因についての比較を行う。


講演者:田中愛治(早稲田大学政治経済学術院教授)、飯田健(早稲田大学高等研究所助教
モデレーター・ディスカッサント:吉野孝(早稲田大学政治経済学術院教授)


 講演の中で、飯田健氏は2008年大統領選挙におけるオバマの得票率の週ごとの違いは何によって説明できるか、2004年との比較で2008年大統領選挙にはどのような特徴があるかを調査し重回帰分析などを用いて分析しました。

 そして、
・2004年、2008年とも黒人は民主党候補者に投票する傾向があったが、とりわけオバマが強く支持されたというわけではない。
・2004年においてヒスパニックはとりわけケリーに投票したわけではなかったが、2008年においてヒスパニックはオバマに投票する傾向があった。
・2004年においてはクリスチャンはブッシュに投票する傾向があったが、2008年においてクリスチャンがマケインに投票するという傾向は見られなかった。
・2004年においてブッシュは必ずしも南部諸州からだけ票を得ていたわけではなかったが、2008年においてマケインの得票は南部諸州に偏る傾向があった。
ということを指摘しています。

 そして、マケインの敗北の原因が彼の戦術にあったとします。すなわちブッシュは自身の基盤であるキリスト教保守派(クリスチャンファンダメンタリスト)を固める一方、伝統的に民主党の基盤であるヒスパニックにアピール(ブッシュはスペイン語を話すことが出来た)することで民主党支持層を侵食したのに対し、マケインはとりたてて自分の基盤もなく、ブッシュのクリスチャンの基盤も継承できず、一方で民主党の支持基盤も崩せなかった、からだということです。

 飯田健氏の発表の前には田中愛治氏が、簡単にアメリカ大統領選挙のこれまでの流れや分析の手法などを述べておりました。そしてモリス・フィオリーナ氏の研究なども挙げながら、アメリカが二極分化しているかと言うことに対してはしていないのではないかと述べていました。また、日本では「民主党がヒラリー支持者とオバマ支持者に分裂している」という報道だったが、むしろ民主党がそれだけ盛り上がっていて、一方の共和党は冷めていたことについてはあまり報道されていなかったのではないかという点も指摘していました。

 ちなみに、2008年の選挙では登録者が増えたが、投票率はそこまで増えていなかったようです。そのことから、共和党の支持層があきらめて(あるいはマケイン嫌いのため)投票しなかったという可能性もあるのでは、と示唆しておりました。

 投票行動分析だけですべてが分かるというわけではないですが、日本での特にテレビでの報道とは印象が異なるのではないでしょうか。

参照URL:http://www.waseda.jp/nichibei/index.html

【お題目de本紹介】2008年に読んで良かった本5冊

 このブログの概要で「本の紹介や・・・」と書いているにもかかわらず、本の紹介をあまりやっていない。かといって、よくある書評じゃつまらないし、そもそも自分の技量および読みの浅さを露呈してしまう。そこで、R25の「R25式ブックレビュー」のように、何らかの題目のもとで本を紹介すれば多少は有益なものが残せるのではないか。また、「自分の考えたことの保存」というこのブログの一つの目的を考慮すると、それで良いのではないか。ということで、「お題目de本紹介」としてたまに本を紹介していきたいと思う(ちゃんと続くと良いなー)。が、お題目を考えるのも一苦労(おいおい)ということで、付け焼き刃なお題目ではあるが、「2008年に読んで良かった本5冊」を紹介します。


●ランディ パウシュ (著)、ジェフリー ザスロー (著)、矢羽野 薫 (翻訳) 『最後の授業 ぼくの命があるうちに最後の授業 ぼくの命があるうちに』ランダムハウス講談社、2008年
 もともとはラジオのデイリープラネットで紹介されていて、その後著者のランディパウシュさんが亡くなったという話を聞いて慌てて読んだ本です。余命宣言を受けながらも決して悲観せず、ユーモアを交えた中身および「最後の授業」は心に響きました。実際の「最後の授業」の字幕付きDVDも入っているのでそれも一緒に。

最後の授業 DVD付き版 ぼくの命があるうちに

最後の授業 DVD付き版 ぼくの命があるうちに


ほぼ日刊イトイ新聞 (著、編集)、糸井重里 (監修)『はたらきたい。』東京糸井重里事務所、2008年
 ほぼ日刊イトイ新聞で連載されていたものをまとめたもの。採用のプロやキャリアのプロ、タレント、そして矢沢永吉と様々な角度から「はたらくということ」を考える。就活期の人以外の人にも何か感じることはあるはず。

はたらきたい。

はたらきたい。


金井壽宏(著)『働くひとのためのキャリア・デザイン』PHP新書、2002年
 上の『はたらきたい。』でも登場する金井先生の新書。キャリアにはドリフト(流される)ことも大事だが、節目ではデザイン(しっかり考える)ことも重要と説く。人生論やマニュアル本とは違い、学問体系も理解できる。

働くひとのためのキャリア・デザイン (PHP新書)

働くひとのためのキャリア・デザイン (PHP新書)


小泉吉宏 (著)『ブッタとシッタカブッタ〈1〉こたえはボクにある』メディアファクトリー、2003年
 ぶたのシッタカブタなどの悩みをブッタ様と触れ合いながら見ていく4コマ漫画。仕事やプライベートで悩んでいた時にすごく楽になれました。シリーズ化されてます。

ブッタとシッタカブッタ〈1〉こたえはボクにある

ブッタとシッタカブッタ〈1〉こたえはボクにある


伊坂幸太郎 (著)『ゴールデンスランバー』新潮社、2007年
 ご存じ昨年の本屋大賞の受賞作です。寝る間も惜しんで、久しぶりにページをめくる手が止まりませんでした。構成や伏線も良いのでしょうが、エンタメ小説(ミステリー)だけれど、監視社会など著者が示唆したいことや訴えたいことが含まれているという点が個人的には良かったです。

ゴールデンスランバー

ゴールデンスランバー

あけました。

 あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

 あまり仕事のことを詳細に書くのも微妙なので、試行錯誤で歩んだ一年目でしたが、本年ももう少し頻繁に何かを発信して行けたらなと思います。

 具体的には、「気になるニュース」…毎月月末に、出版関連で気になったニュースを紹介、「勉強会&講演会」…自身が参加した勉強会や講演会のレポート、「お気に入り」…自分のお気に入りの本や場所など、などなどを伝えられればと計画してます。

 余談。某居酒屋チェーン社長の著書によると、「目標を、仕事、家庭、教養、財産、趣味、健康、の6つに分けてそれぞれ短期的・長期的視点に分けてプランニングすると良いとあります。私自身も分野と時間に分けてマトリクスのようにして整理するのは有益と考えてます。自分の中で、「これは」という本などのフレーズなども(もちろん著作権などを考慮して)紹介できたらなと思います。

今年の書籍のベストセラー

 今年の書籍のベストセラーが、トーハン、日販、紀伊国屋などで発表されました。


10位までに血液型本4冊…書籍の年間ベストセラー

 2008年の書籍の年間ベストセラー(トーハン調べ)が3日発表された。 世界的な人気ファンタジーの最終巻「ハリー・ポッターと死の秘宝」(J・K・ローリング著、静山社刊)が発行部数185万部で総合トップ。また、3位の「B型自分の説明書」をはじめ、「O型--」「A型--」「AB型--」と文芸社刊の血液型本がそろってベスト10入り。4冊合計だと発行部数は500万部。
 文芸部門では、東野圭吾(ひがしのけいご)さんが「流星の絆(きずな)」(講談社刊)でトップをさらい、テレビドラマや映画もヒットした「ガリレオ」シリーズの「聖女の救済」「ガリレオの苦悩」(文芸春秋刊)も2位、3位となり、同部門のベスト3を独占した。
(2008/12/03 読売新聞)

 B型自分の説明書関連は結構売れましたね。中身としてはチェックリストのようなもので、Web上の「○○診断」などでありそうな内容なのですが、それでも書籍として売れたと言うことに意義が見いだせるのかなとも思います。

 今年のポイントは、いわゆる大手版元から発行されているものが少ないと言うこと。これは「中小版元は厳しい」と言われているものの、マーケティングとヒットの流れに乗れば中小でも売れるものは売れるということの現れなのではないでしょうか。逆に確固たる基盤がない分、ヒットに依存せざるを得ないギャンブル的な要素をはらんでいると言うことも言えるのかもしれませんけど。

 参考までに、3つでのランキングへのリンクを載せておきます。

トーハンhttp://www.tohan.jp/cat2/year/2008_1/
日販http://www.honya-town.co.jp/hst/HT/best/year.html
紀伊国屋http://www.kinokuniya.co.jp/01f/kinobes/2008/rank.htm

出版人適正占い

 電車に乗っていると某就活支援サイトが「エントリー受け付け開始」という広告が先月あたりから目に付きだしました。ふと大学時代に、小●館の方がいらしていたときに話していた「出版社に入るためのチェックリスト」なるものを思い出しました。元々は自分自身が就職活動中に聞いた話をメモして、当時のブログにアップしたものなのですが(他にもその方の話を聞いていれば覚えていらっしゃるのではと思う。毎回そのようなお話はされるようなので)、紹介したいと思います。

【○×で答えてください。 】
Q1.異性にモテる。
Q2.自分に対してコンプレックスを持っている。
Q3.田舎モノである。
Q4.親が頑固者である。
Q5.世の中面白いことの方が多いと思う。
Q6.出版業界にしか行きたくない。
Q7.これまでの人生で結構回り道をしてきた。
Q8.血液型はBかABである。
Q9.日頃から雑誌や書籍を愛読している。
Q10.これだけじゃ本当に向いているのかどうか分からない。


 以上です。過半数を超えていれば適正があるそうです。でも逆に全部当てはまると社会への適正が怪しいかもしれません(笑)。6〜8個だと良いのではないでしょうか。

 さて、せっかくなので、出版人になる条件というのが本当にあるのかを次回以降時間があるときに考えてみたいと思います。

見田宗介先生の講演に行ってきました。

 東大で「異分野交流演習」という授業があって、その公開シンポジウムに行ってきました。グローバルCOEで「死生学の展開と組織化」というのがあるそうで、その一環での試みなんだそう。

 個人的には、こんなコトを書くのは今思うと恥ずかしいのですが、アンチ社会学だったんです。社会学ってどうも「社会現象を分析してそれでおしまい」っていう学問という認識があって(すごい偏見だよなー)。たぶん、いわゆる「酒鬼薔薇」や「キレる17歳」などの時にテレビに出てきた似非評論家や、「若者の見方ぶって偉そうに喋っている学者」に嫌気がさしてたってのもあるんだと思うんだけど。当時って(今もそうなのかもしれないけど)、理論を持って「分析したぜ」って感じで安直に「●●が悪い」と結論づけてそれでおしまい、って雰囲気があったんです。「親が悪い」だの「ゲームが悪い」だの「社会が変わった」だの「受験戦争が悪い」だのいろいろと言ったけど、結局当事者の「若者」としては何のありがたみもなかったし、何のために彼らがテレビで喋っているのかも分からなかった。何が言いたいかっていうと、そこからの発展性がない。つまり「じゃあどうすれば良いのか?」っていう視点が欠けているんだと思う。

 私は大学時代に政治学をちょこっと勉強していたのですが(これも社会のことを知りたいけど社会学ではなく社会科学系の学問がやりたかったという理由にもよります)、私の師匠曰く「政治学は本来は改革のための学問だ」って言っていたのもあって、どうも分析しておしまいっていうのは抵抗があったんです。

 で、話をシンポジウムに戻すと、まず見田宗介先生の講演があって、その後加藤典洋氏、田口ランディ氏、竹田青嗣氏、島薗進氏に見田先生を加えた5人での討論。15時から18時半というただでさえ長い時間なのに、見田先生の延長戦もあり、19時を過ぎる頃まで続きました。ノートにメモした用語だけ拾うと以下の通り。もう少し頭の中で整理した方がよいと思うんだけど、熱が冷めないうちに。

  • 見田先生

軸の時代、ロジスティックス曲線、グローバリズムは無限から有限への転換点、カイロモン、自我のない他者

  • 加藤先生

他利私欲、内部化

  • 田口先生

もやしもん(触媒)としての人間からカイロモン的存在としての人間へ。

  • 竹田先生

歴史の再定義。資本主義の正統性。

  • 島薗先生

なぜ軸の時代か? 未来を構想する主体、構想は?

 見田先生の話は脱線することがあるものの面白く、とても1時間半喋っていたとは思えなかった。全体的に非常に面白かったんだけど、やっぱりパネリストが多かったため、各パネリストの討論が少なかったことと、各討論者が有機的に絡み合う場面が少なかったのは少し残念でした。

 タイトルが「軸の時代?/軸の時代? - いかに未来を構想しうるか?」ってこともあって、未来に向けた提言もしていこうという意気込みが感じられたことと、各パネリストの提言などもあって、私の社会学嫌いが解消されたように感じたのでした。

http://www.l.u-tokyo.ac.jp/shiseigaku/ja/yotei/s081113.htm

B’zのライブに行ってきた。

 20日B’zのライブに行ってきました。2003年の渚園以来の久しぶりの「Pleasure」シリーズ。Pleasureシリーズのライブは要するにベスト版のライブのことで、昔の曲から最近の曲まで、ヒット曲を中心に行うライブのこと。今年はB'zが20周年ということと、2つのベストアルバムをリリースしたこともあってそのようなライブが組まれたようです。

 オープニングで、女の人のムービーが流れ、その人がステージに登場して何するんだろうと思いきや「Well... I really don't know how to say but,I guess I love you」と喋って、BAD COMMUNICATIONがスタート。孤独のRunawayやNATIVE DANCE、だからその手を離してなどなつかしい曲や、稲葉さんと松本さんのトークビートルズのセッションや、休憩(?)の間に昔の映像を流したり、とB'zのこれまでを扱った感じで、ファンにはたまらないライブでした。

 そのほかの曲も、前半からultra soulなどノリの良い曲が続き、juice、愛のバクダン、BANZAIの3連続、恋心(KOI-GOKORO)やNATIVE DANCEの振り付け、花火などの派手な演出など、日頃の溜まったものを発散できるとても良いライブでした。

 それにしても、稲葉さんは若いですね。これで44歳なんだからびっくりです。

01.BAD COMMUNICATION -ULTRA Pleasure Style-
02.ultra soul
03.裸足の女神
04.BLOWIN' -ULTRA Treasure Style-
05.ねがい
06.今夜月の見える丘に
07.もう一度キスしたかった
08.恋心(KOI-GOKORO)
09.孤独のRunaway
10.Don't Leave Me
11.OCEAN
12.NATIVE DANCE
13.Oh! Darling ビートルズ
14.だからその手を離して
15.いつかまたここで
16.ONE
17.LOVE PHANTOM
18.ZERO
19.juice
20.愛のバクダン
21.BANZAI
22.Brotherhood
23.ギリギリchop
24.グローリーデイズ
25.RUN
26.Pleasure 2008〜人生の快楽〜